減量のための運動ガイド:週当たりの時間と種類
理想的な体型を目指すには、単に体重を減らすだけでなく、体組成(からだの内訳)を改善することが重要です。
減量のための運動時間と、その質を高める体組成改善のための運動の種類についてまとめました。
0.体組成とエネルギーバランス
体組成とは?
脂肪+徐脂肪(筋肉、骨、水分、臓器など)
・徐脂肪体重:体重から脂肪を除いた重さのことです。減量において、徐脂肪体重を減らさないことが、見た目の変化にも健康のために大切です。
・体組成改善:「不必要な体脂肪を減らし、徐脂肪体重(特に筋肉)を維持・増加させる」
体重が変化する条件:エネルギー出納(すいとう)
体重の増減は、[摂取エネルギー]-[消費エネルギー]のバランスで決まります(1,2)。+であれば体重は増加し、ーであれば体重は減少します。しかし、体重変化の内訳は、エネルギーの構成要素やその割合によって影響を受けるため、体組成の変化を体重変化だけで見ることはできません(3)。
・消費エネルギーの4つの構成要素
1.基礎代謝量:生命維持に必須のエネルギー。総消費エネルギーの約6割を占めます。同じ体重を比較したとき、筋肉量が多いほど高くなりやすいです。
2.食事誘発性熱産生:食べたものを消化・吸収する際に生じる熱エネルギー。タンパク質は、糖質・脂質より多くの熱を産生します。
3.運動:スポーツやエクササイズなど意図的な身体活動による消費。
4.非運動性熱産生:家事、仕事、階段の昇り降りなど、運動以外の日常生活動作によるエネルギー消費。

・脂肪1kgを減らすために、、
→累計で約7000kcalのエネルギー不足(摂取<消費)をつくる必要があります(1)。ただし、急激な減量は、脂肪ではなく徐脂肪体重の減少を招く(4)ため、脂肪減を目的とした減量プログラムが必要です。
1.週当たりの運動時間が体に及ぼす影響
健康維持・生活習慣病予防:歩行などの活動を1日60分以上(8000歩以上)
日本の「身体活動・運動ガイド2023」では、上記を推奨しています。これは、多くの日本人を対象とした研究データから導き出された生活習慣病予防の基準です。また、週2~3回の大筋群を対象とした筋力トレーニングを上記の運動のなかに取り入れることも推奨しています(1)。
減量:週250分以上の*中強度*運動
アメリカスポーツ医学会の公式見解に基づくと、体重減少(体重の3~5%)を達成するためには、週に250分以上の*中強度*の身体活動が必要とされています(5)。
リバウンドの防止:週250~300分の*中強度*運動
アメリカスポーツ医学会の公式見解に基づくと、減量後の体重を長期的に保持し、再増加を防ぐには、さらに多い週250~300分の中強度の身体活動が推奨されます(5)。
*中強度*の身体活動
・「少し息が上がるが、笑顔で会話ができる」程度の活動。普通歩行(3メッツ)や速歩(4メッツ)が該当します。そのほか、下図の3~5.9メッツの間に該当します。


上2枚の画像:健康づくりの身体活動・運動ガイド2023より
・メッツ=なにもせずに座っているときの強度を1として、活動強度を表す単位。
2.運動の種類別、体に及ぼす影響
有酸素性エクササイズ
ウォーキングやランニングなど、継続的な活動によって脂肪組織の代謝を促し、上述の運動時間を支え体脂肪量を減少させる中心的な役割を担います。ただし、有酸素運動単独での減少では、脂肪だけでなく筋肉も失われやすいため、後述するレジスタンスエクササイズとの組み合わせが推奨されます(2)。
レジスタンスエクササイズ(筋力トレーニング)
単独での短期間の減量効果は大きくありませんが、筋肉量を維持・増加させることで基礎代謝量を高く保ち、リバウンド防止に極めて重要です(5)。全身をまんべんなく鍛えること、日常生活以上の負荷を筋肉にかけること、そして鍛えると同時に筋肉を休める日を設けることが重要です(1)。
高強度インターバルトレーニング
全力に近いダッシュや全身運動を休息とともに繰り返します。時間効率が非常に高いのが特徴で、わずか2分間の全力運動が、30分間の有酸素運動と同等の24時間消費カロリーをもたらすという研究もあります(6)。

3.食事、睡眠が体組成に及ぼす影響
食事
タンパク質の積極摂取:
減量中は筋肉が失われやすいため、体重1kgあたり1.2~1.7gのたんぱく質摂取が推奨されます(4)(腎機能の低下など疾患を抱える場合はまずは主治医とご相談ください)。1日の中で20~25gを複数回(3時間おきなど)に分けて摂取すると、筋肉の合成効率アップが期待できます(4,7)
さけやさばなどの魚に含まれるオメガ3脂肪酸は、筋の成長を助けるほか、運動による炎症を抑え、回復を早める効果が期待できます(7)。
流行りのダイエットの問題点:
極端な低カロリー食や単一食品ダイエットは、筋肉を減少させ、基礎代謝量を1日200kcal以上も低下させる「代謝適応」を引き起こし、以前より太りやすい体質を作ります(8)。
睡眠
筋肉量の減少:
睡眠不足でのダイエットは、体脂肪よりも筋肉を優先的に減少させてしまいます(3)。
食欲の増大:
睡眠不足では、空腹感を感じさせるホルモン「グレリン」が増加し、高カロリーな食べ物への欲求が高まります(3)。食べすぎを自制することが困難になります。
4.体組成改善のための具体的なアクション
1.1日プラス1000歩
2.週2~3回全身をまんべんなく筋トレ
3.毎食たんぱく質を意識(魚、肉、卵、大豆製品、乳製品)
4.スマホ時間を減らして睡眠時間の確保
できることから一つずつ。
5.参考文献
1.厚生労働省.健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023.令和6年1月.
2.Dylan Klein.食事の頻度と体重の減少-「Stoking the metabolic fire:代謝の炎をかき立てる」ということはあるのか?.NSCA JAPAN Volume23,Number4,pages17-19.
3.Chiristopher Barakat,Jeremy Peason,et al.身体組成の改善:鍛錬されたアスリートは筋の増強と脂肪の減少を同時に行うことができるか?.NSCA JAPAN Volume28,Number5,pages25-37.
4.Kurt A.Escobar,Trisha A.McLain,et al.スポーツ栄養におけるタンパク質の応用 第2部:タイミングとタンパク質摂取方法、徐脂肪量の増加および脂肪の減少.NSCA JAPAN,Volume25,Number1,pages45-55.
5.David O.Sword.体重過多と肥満の管理方法としてのエクササイズ:レジスタンスエクササイズをいかに応用するか?.NSCA JAPAN,Volume20,Number2,pages24-31.
6.Lymperis P.Koziris.スプリントインターバルエクササイズを用いた脂肪減少:高い投資利益率.Strength and Conditioning Journal/NSCA Japan Web Journal 2018.
7.Laurel Wentz.運動誘発性炎症のバランスをとる栄養戦略.NSCA COACH/NSCA Japan Web Journal 2020.
8.永井 成美.女性のやせと健康への影響:どのような栄養と運動が望ましいのか.NSCA JAPAN Volume28,Number5,pages10-17.